矛 盾
時は戦国時代。周室の威令は全く地を払い、群雄は天下に乱立して、互いに覇を競い合っていた。あちらでも、こちらでも、戦いが繰り返され、土地や城を取ったり、取られたり、血生臭い風が中国全土を覆っていたことは、日本の戦国時代と同様だった。  そんな時代だから、兵器の消耗も激しく、良い武器は飛ぶように売れた、そのころ、ある町の、ある街頭に、盾と矛を地面に並べて売る男がいた。戦争も一時小康状態にあり、人々はいつ襲ってくるかも知れぬ戦雲に怯えながらも、僅かな平和の日を楽しむため街頭に繰り出し、町中は織りなすような雑踏ぶり。西に東に往来する人々の頭上に、いろんな物売りの呼び声を圧して、この男の濁声が響き渡った。  「さぁお立ち会い。  手前これに取り出しましたる盾、  どこにでもかしこにでもある盾とは、同じ盾でも盾が違う。  名人の手に成るこの盾の堅いことは天下無敵。  どんな鋭い矛を持ってしても、決して突き破れぬと言う逸品じゃ。  さぁ買ったり、買ったり。  敵はいつ攻めて来るか解りませんぞ。  その時になって慌てても、もう遅い。  さぁ、早いが勝ちじゃ。買っ 阅读全文>>